このご依頼を受けたとき、すぐに思い浮かんだのが、とっておきのストック。

実は、1980年代〜90年代にかけてスウェーデン軍で採用されていたコックジャケットがずっと気になっていて、昨年に見つけてからブックマークしていたんです。

「いつか、この素材で仕立ててみたい」と思いながら、なかなかその“いつか”が来なかった。

そのタイミングが、今回だったわけです。

使うべきときが来た、という感覚がありました。

ジャケットは淡いグレーに染め直し、ブランドスローガンである「There is no accounting for tastes.」のパッチを右に。

左胸には、別途制作した「サークルA」のワッペンを添えました。

スタイリッシュさと無骨さの両方を併せ持った、t.n.A.f.t.らしい仕上がりになったと思います。

それにしても、このスウェーデン軍のジャケット──やっぱり美しいシルエット。

機能的でありながら、どこか静かな気品もあって。

そこに少しだけノイズを加えるように、色と意志を染み込ませていく。

そのバランスが、とても心地よかった。

そして何より、今回も完成後にとても喜んでいただけたことが、ほんとうにうれしかったです。

“飾られるため”ではなく、“実際に着られるもの”を届けられること。

t.n.A.f.t.が目指しているのは、まさにそういう服です。

一着が、誰かの日常に根ざしていく──その瞬間に立ち会えることが、何よりのよろこび。

cook jacket 2025は、そんな一着になりました。